スパイダー
智鶴
此処の夜は寒くて
切なくなってしまう
星達も何処か無機的で
ただの白い光点として
この夜を照らさない
いつか幻を見た電柱は
冷たく湿っているようで
そっと頬を当てると
意外にも滑らかだった
平面的な夜の下
私は痩せてしまった手を
虚ろに輝く月にかざして
それは小さな蜘蛛の巣のように
月光にすら透けていた
いつの間にか
こんなにも薄くなってしまった影を抱えて
私は部屋の隅で泣いている
昔捨てた私の影が
また、静かに忍び寄ってきて
君も一緒さ、と耳元で囁く
不必要を自覚して
部屋の隅で息を潜めていたのに
結局摘み取られてしまうんだ
まるで君のようだね
スパイダー