スパイダー
智鶴

此処の夜は寒くて
切なくなってしまう
星達も何処か無機的で
ただの白い光点として
この夜を照らさない

いつか幻を見た電柱は
冷たく湿っているようで
そっと頬を当てると
意外にも滑らかだった

平面的な夜の下
私は痩せてしまった手を
虚ろに輝く月にかざして
それは小さな蜘蛛の巣のように
月光にすら透けていた

いつの間にか
こんなにも薄くなってしまった影を抱えて
私は部屋の隅で泣いている
昔捨てた私の影が
また、静かに忍び寄ってきて
君も一緒さ、と耳元で囁く

不必要を自覚して
部屋の隅で息を潜めていたのに
結局摘み取られてしまうんだ

まるで君のようだね

スパイダー


自由詩 スパイダー Copyright 智鶴 2007-08-09 00:59:55
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