夏の振動
瀧田 右恭

剥離する夏と
隣に立つあなたの
好きな花は桜

夏は蝉しぐれの木に変わる

あの
時間を燃やす歌声が
肌に刺さって
泣いたのは
悲しかったからじゃなくて
羨ましかったからだと
笑った


今はもういない
あなたの残り香は
濃厚な
夏の匂いだから

鼻孔をとじて

私は耳の夏


聞こえるのは
胎動する空気と
青空の入道が
静かに呼吸する音

じわり

熱い

汗は
刹那の涙にまじって
塩分を増して
零れる

あふれゆく

夏と



時間が身じろぎするような
深い

足音が
迫って



ふるり と



震える







自由詩 夏の振動 Copyright 瀧田 右恭 2007-08-07 19:37:16
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