仔羊の唄
麻生ゆり



どこかで
仔羊が鳴いている

めぇぇえ

仔羊は迷いながら
堂々巡りをしている

めぇぇえ

嗚呼
何が幸いや幸いや

めぇぇえ

苦しんでいる人を
助けることか?

飢えている誰かを
満たすことか?

あるいは大事な人を
守ることか?

もしくは救われたい自分自身を
救済することか

めぇぇえ

嗚呼
何が幸いや幸いや




堂々巡りをした仔羊は
また同じところに戻ってくる

めぇぇえ

そしてまた
鳴き始める

めぇぇえ

嗚呼
何が幸いや幸いや

めぇぇえ

もしも神様
あなたがいらっしゃるのであれば

この病んだ世界で
生きる私たちを

その大きくて安らかな
手のひらで

温かく温かく
包んでください

めぇぇえ

嗚呼
何が幸いや幸いや

めぇぇえ




鳴き続けた
その仔羊は

めぇぇえ

母を求めているのか
父を欲しているのか

めぇぇえ

嗚呼
何が幸いや幸いや

めぇぇえ

羊水の中で待っている
その子供のために

傷ついた瞳をした
その子供のために

いったい何が
できるのだろう?

これは人類が
自分自身で犯した罪

めぇぇえ

嗚呼
何が幸いや幸いや

めぇぇえ…


自由詩 仔羊の唄 Copyright 麻生ゆり 2007-08-07 02:25:40
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