昔日
風音



小さい頃
ラムネのビー玉は
取れると思っていた

母と行く縁日
たくさんの人混みに
少し怯えて
けれど
ピー、ポンポン、シャラシャラ
音に惹かれて
駆け出した

ー手を離さないでね 迷子になるからー

母と手を繋いで
人混みに溶けて

ーラムネ買って、お母さん
ねだるのは
いつもラムネだった
プシュッ、と音がして
泡が弾ける

ビー玉を
転がし転がし飲む夕暮れ
ーこのビー玉取れないの?
ー取れないのよ。ビー玉は瓶に入っていたいって
わたしはふてくされてラムネを飲み干した

今でもラムネのビー玉は取れないけど
母にもやさしくなれないけれど

今年の夏は
また一緒に縁日に行こう
そして今度は
母にラムネを買ってあげよう

そして
母の欲しがるもの全てを買ってあげよう
せめてもの
罪ほろぼしに


携帯写真+詩 昔日 Copyright 風音 2007-08-06 16:21:02
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