擬態のコビト
あおば


擬態のコビトが悪態付いた
疑似体験を済ませたあとで
お御籤引いた
冷戦が
冷戦のままに終わったと
ソ連邦の終焉で共産主義の脅威は去ったと
新しい核爆弾が降ってこなくなって
安心して空を仰げるようになって
擬態のコビトは大きくなって
コビトの姿を失って
次の姿態を模索する

茂平の息子の茂作は
今日も草取りをしている
家の前の草が伸びているから
みっともないから
綺麗にしろと
茂平は言った
茂平の妻は忙しく
仕方ないので茂作に告げた
茂作は意気地無しなので
口答えもしないで
草むしりを始めたが
幼いのですぐに疲れて
飽きて
綺麗にならない前に
逃げ出してしまった
茂作が1人
遊んでいるうちに
草が伸びてみっともないままに茂っているうちに
21世紀を迎え
擬態のコビトがやって来て
茂平の代わりに文句を言った
家の前に草が伸びている
少しは綺麗にしたらどうなのだと
茂平の妻は亡くなって
幼い茂作が代わりする
擬態のコビトと喧嘩する
おまえが綺麗にしなかったから
草が生えてみっともない状態になっている
少しは綺麗にしたらどうなのだと
擬態のコビトが詰め寄った
幼い茂作はことばに詰まり
のこのこと草刈り鎌を手にして表に行って
擬態のコビトが家の番をすると
家の中は綺麗になって
誰がどこから来ても
文句の付け所の無いようになって
草刈りの下手な
幼い茂作は住み処を失い
草刈り鎌を手にしてどこかに行った

擬態のコビトが擬態して
扉のようになっている
鍵の掛かった擬態のコビト
擬態のコビトは
擬態を付いて
悪態忘れて固まった

擬態の擬態は擬態でござる
茂作の声は聞こえない
空飛ぶ絨毯巻き取った
擬態のコビトが歩き出す
070806


自由詩 擬態のコビト Copyright あおば 2007-08-06 05:58:35
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