ポケットに速度
あおば

                070805



一人前500円
それ以上は駄目!
経理担当に釘を刺されて出てきたが
500円のお弁当は少し貧弱
食欲旺盛の人たちにはもの足りないと
フードセンターを行ったり来たり
五目おこわに唐揚げ付けて
余ったお金でおにぎり買って
これで我慢してもらいましょうと
階段を上る
北口広場では物珍しそうな顔をしたツアー客
慣れた手つきの係員の旗に従って
マイクロバスに詰め込まれ
これから行くはずの温泉ホテルを目指してる
今からでは少し到着が早すぎるような気がするが
遅すぎるよりは都合がよいのだろうと
フロア係の困った顔が目に浮かぶ
人の心配ばかりしていると
係長! なにをぼんやりしてるの!
もう焼きが回ったの、早くしてよと急かされる
昼食の時間も拘束されているけれど
少しは自由な気分になりたいと
お弁当を選んで戻るところなのにと
少し不満が口のそばまで忍び寄る
プロジェクトリーダーの景山課長と
見回りに立ち寄った営業の黒川部長
暑いもんだから扇子など手に持って
手持ちぶさたで待っている
1人分500円ですよと念を押し
部長から課長へと五目を渡し
唐揚げもありますから良かったら一緒に(召し上がりませんか)と誘う
メタボの部長が手を伸ばすはずもなく
ビリー語録の課長は偉そうにうなずいて
ずんずん歩いて道案内
左手の高架の下には貨物専用の入り口があって
一日に300台は利用しているとかで
昼間でも薄暗いからライトを付けて走っている
出会い頭にぶつかるような感じもするので
歩行者は十分注意しないといけません。
その先の開けたところに駐車場があって
待ちくたびれた2組の家族たちが
お父さんたち、なにをのんびりしていたのと
喧しいので
クーラーの缶ビールを掴みだし、黙って飲んだら
うまかった。




自由詩 ポケットに速度 Copyright あおば 2007-08-05 01:53:33
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