真夜中だから
ポッケ

胸がつかえるような
泣き出す寸前みたいな
ぐるぐる回るくすぶりに
95%くらい持っていかれたから
そのままひとりになってしまいたかった

掛け布団をかぶって
端っこを全部なかに引き入れた
洗濯と髪と
うちの匂いがした
熱く湿気てきた布団の中から
にぎりこぶし一つ
外へ出して
気道を確保する

真夜中だから
「プリン食べる?」と
トンネルをのぞくように声を掛ける
ちいさな母親はいない

短いひとり旅と
布団から
昼寝のあとのように素っ気なく抜け出し
薄暗く狭いキッチンを
ぶつかりながら冷蔵庫まで歩いてゆく

紙パックの100%オレンジを
ちびちび飲みながら
「オレンジジュースを飲むと寝付きがいい」と
セルフ健康法を実行する父を思い出す
ついでに「マミー」が好きで野菜嫌いな兄も思い出す

薄暗いキッチンの中
もと来たルートをたどる
今度はぶつからない

布団は腹の上に真一文字にのせ
いくぶん爽やかな心持ちで目をつむった
オレンジジュースが虫歯に及ぼす影響だけが気にかかった









未詩・独白 真夜中だから Copyright ポッケ 2007-08-04 03:56:45
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