一人野球
木屋 亞万

マウンドに立っている
誰も守らないグランドの真ん中

ほんの少し前まで
外野で黙ってろと
生えた草むしりとか
雲数えたりしていたのに

気付けばマウンドに立っていた
大きすぎるグローブ片手

白い枠の中には
こん棒持った男が一人
後ろにいるべき
捕手はいない

ああマウンドにいるのだ
けれど手元に球は無い

たましいを投げよう
魂と球は似ている
真っ直ぐ投げつけよう
打ちのめされても
ただ真っ直ぐに

マウンドから振りかぶって
ホームへ投げ込んでやる

打ち返されたら
受け止めてやる
俺の球は俺の魂

打ち上げられたら
追いかけてやる
どこへでも飛び込んで
打者を静かに追い詰める

打たれなかったら
落ちた魂を拾いに行かないと
打者の前を通過する時
マウンドに戻る気は起こるか

球と雲は似ているな
ロージンパックを
手で遊びながら
見上げた空には
一面に雲広がっていた


自由詩 一人野球 Copyright 木屋 亞万 2007-08-03 23:19:25
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