夏は泣かない
悠詩

夏は涙を流してくれない


瑞々しい草木の
しなやかな手に雫を落とす


食卓のある窓の
鈍色ガラスに雫を垂れる

自分たちの体温に気づいた時
季節は泣いてくれる


夏だって
三十六度を燃やしつづけているのに
どうして




家の奥
おじいちゃんが住んでいた部屋
暖かさが消えてしまった部屋
一年中涙は零れない



夏には
天国からおじいちゃんが
帰ってくるんだって

笑顔で迎えなければならないんだって


それでも悲しくて
我慢できなくなった時に
泣けるのは
夏じゃなく
わたしたちなんだ




夏は涙を流してくれない





自由詩 夏は泣かない Copyright 悠詩 2007-08-02 11:27:03
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