冬は寒い
楢山孝介

寒さに震えながら 畦道を 歩いていたら
冬は 寒いねえ と
顔なじみのハクセキレイに 話しかけられた

冬は 本当に 寒いねえ
ねえねえ 冬は寒いよねえ
冬は何で 寒いんだろうねえ
本当に 冬は 寒いねえ

ハクセキレイは そんなことばかり 呟く
あったかい缶コーヒーでも飲むか と訊くと
ハクセキレイは
冬 寒い 本当に 何で
という言葉で頭がいっぱいなので
あったかい 缶コーヒー 飲む
という言葉の意味を わかってくれない

ハクセキレイは 尾を上げ下げしながら
うんうん と頷くのだが
僕が缶コーヒーを買いに行こうとすると

ねえ 冬は 寒いねえ
本当に 何で 寒いのだろう 冬は

と 僕を引き留めるために 話しかけてくる
仕方がないので 僕にわかる限りで
冬の寒さを 説明しようとしても
冬 寒い 何で 本当に
以外の言葉は 全く通じないのだ


          2006.12.26作


自由詩 冬は寒い Copyright 楢山孝介 2007-08-02 10:53:19
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