もうすぐ血液になる予定
柳瀬


青い窓にハエみたいな虫がとまった
ぷち、と指でつぶしてころす

それだけで
ただそれだけで
きみに話す事はそれだけで

はえがまどにとまったんだよ!ころしたんだよ!

って、ただそれだけで
ぼくはそんなんで、そんなんでさあ

ふうんって、笑いながらきみはぼくの頭を撫でてくれて
その後は股を大きく広げて
ぼくのことを全て搾り取るくせに

空っぽだから何もなくてね
はえがまどにとまったんだよ!ころしたんだよ!
って、それを吐き出せばもう終わりなのに

小さい命を無理矢理おわらせたとき
ぼくが少し安心したのは
ぼくの手でも殺められるものが
すぐそばに、一つでも多くあると分かって
そしてそれを守るものが何もないと
知っていたからなんだよ

ハエみたいな虫の残骸は
ぼくの指をふいたティッシュに一緒にくるまれて
きみが愛する事になるかもしれなかった
何億という子供たちが捨てられているゴミ箱に
一緒に捨てられるのに

そのなかで誰かを愛する事なんて
そのなかで誰かをころす事なんて
そのなかで誰かを守る事なんて

ぷち、って簡単につぶせるくらいに
かなしい事だって、思ってはくれないの


自由詩 もうすぐ血液になる予定 Copyright 柳瀬 2007-08-01 02:12:34
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