絵本
木屋 亞万

あけない夜はないけれど あけにくい夜はある
みんみんゼミは今日もねむれぬ夜をすごすのだ
月にはくものむれが重なって
まんまるお月さんはうたたねうたたね
虫かご持った男の子虫アミ片手に走り出し
月がねているすきをねらって星とりにいく
ねむれぬセミは男の子に気付いて
こっちさ こっちさ この木の上さ ここからならば天に手が届く
よし来たと登る男の子

ひるまはいのちをねらわれるセミ
夜はお星さまをねらう手助け
明日もしセミを見つけても
虫アミふらない約束ね

さあ木のてっぺんから身をのりだして
枝をしならせアミをふる
まだあと少しもうちょっと
身をのりだして空へ手をのばす
顔をぐんと近づけて
飛び上がったら枝が折れた

月はくもをめくり上げ
だれだ だれだと空を動く
セミはジビジジ どこかへにげて

月に吸いこまれていく男の子



今日の昼頃に5歳の男の子が絵本に食べられるという事件が発生しました。
男の子は母親が少し目を放した隙に一人で本を開き食べられてしまった模様です。母親の発見当時フローリングには男の子のお尻の形になった汗だけが残っていたということです。
絵本は座った男の子を包み込めるほどの大きさがあり5歳の誕生日にプレゼントとしてもらったものだったそうです。肌身離さず持ち歩きいたく気に入っていたとの証言もあり警察は男の子が絵本に熱中し過ぎて、言葉通り世界に入り込んでしまったと見て調べを進めています。


自由詩 絵本 Copyright 木屋 亞万 2007-07-31 23:32:50
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