南アメリカ大陸の布団
ブルース瀬戸内

ほとばしるような朝だった。

私は何者かの言葉で
急かされるように目を覚ました。

すべては夢であったと
この期に及んで、
何に対して言えばいいのだろう。

解せないことが多すぎるからといって
私ごときに不条理を嘆く資格があるのだろうか。

私たちは過去の微修正に躍起になって
現在をやけに疎かにする。

そんな慣習の先にあるものを
私は見たくはない。

私は掛け布団をめくる。

そこには壮大なる
南アメリカ大陸が描かれている。

マゼラン海峡の辺りなんて
実に繊細に再現されている。

私は顔を赤らめる。

ほのかなる臭気に
私が気がつくことはなかった。

今年、小5の私にとって
そろそろ止めるべき慣習ではある。

自慢するつもりはないが
私は南アメリカ大陸の夢など見ていない。
自慢したとして
その意味も分からないが。

しかし愛着がないとは言わない。
何しろ描くのはいつも南アメリカ大陸だ。

私は掛け布団をそっとかける。

隠蔽ではないが、
乾け、南アメリカ大陸!
あるいは遥か彼方へ大陸移動せよ!


私は、私を目覚めさせた声の主の元へ
一目散に駆け寄り
私の布団に近づかぬように
陽動作戦を開始する。


自由詩 南アメリカ大陸の布団 Copyright ブルース瀬戸内 2007-07-30 20:52:37
notebook Home 戻る  過去 未来