部活動にて
円谷一
バスに乗って学校へ行く
車内には誰もいないのに吊革に掴まって真ん中で立っている
乳白色の雲は均等にぴったりと空に張り付いている
ストップし動き出す毎に内臓が揺れる それがすごく心地良い
座椅子の匂いが充満している 途端に街へ行きたくなり終点まで乗っていようかと迷う
でも部活の顧問に怒られるのが怖いので旭町2条10丁目で降りることにする
春光町に入った時に急に具合が悪くなる ポスフールと行き交う車の数を見て気持ちが悪くなったのだ 早く旭町2条10丁目の停留所に着いて欲しいと願う この一帯がたまらなく嫌なのだということを知った そのことに気付くと幾分か気分が良くなったような気がした
停留所で降りると足の下で微かな風が吹き荒れた 足元の小石がコロコロと転がって車が通って風が吹いた アスファルトはカラカラに渇いていて 足で蹴ると虚ろな音がした 高校まで一直線だが殺風景な景色が広がっていた 通り道にある教育大の落葉樹だけが心を和まし それを見ながら歩いていき 通り過ぎると高校の落葉樹を見ながら高校まで歩いていった
親密なアスファルトを流し込んだ道の感触を確かながら真っ白な校舎を見上げながら楽器のチューニングの音色を聴いて玄関に入った 練習熱心な人がいるものだ 高い長い階段を上がっていくと突き当たりを左に曲がった先に音楽室があった ロッカーの上にはアコースティックギターが壊れたものも含めて沢山置かれていた 同級生や後輩が集まっていたが いないものと思ってYUIのCHE.R.RYを弾いた 演奏が終わると部屋の隅の方から拍手が上がったけれど特に感化されず隣の隣の楽器庫にバス・クラリネットを取りに行った 木製の棚から取り出す時に男の後輩からおはよう と声をかけられおはよう と返事を返した 彼は下の棚からクラリネットを出し一緒に歩いて下の階の僕の教室に行って練習を始めた 今日は合奏がある 合奏曲を一通り練習し一息ついて先に教室に来ていて練習していた女の子の後輩と話しを始めた 些細なことだったが心から笑って久々に清々しい気持ちになった 乳白色の雲が千切れて光が透けて見えて綺麗だなと感じた
譜面台を片手に持って教室を出て階段を上がり音楽室を目指す 同じバス・クラリネットの同級生が先に椅子に座っていてチューニングをしていた 椅子に座ってチューニングをすると手の甲が鉄臭いのに気付いた 譜面台を恨めしく思った まだ人数が集まっていなくぽつりぽつりといた しばらく退屈そうにしていると元気の良い女の子の同級生が ジャムセッションやろうよ! と言ってBen E.KingのStand by Meをみんなで演奏した 最初はバス・クラリネットやコントラバスの演奏だったが 次第に色々な楽器が入ってきて とても賑やかになった 遅れて教室に入ってきた人達も演奏しながら教室に入ってきた人達も含めて 壮大な楽団となった 顧問も隣の準備室から指揮を振りながら入ってきて みんなで笑顔になって演奏していた 空は完全に陽の光がグラウンドに射し込んできて 春の訪れをみんなで祝福した