「屁」
プテラノドン
夏の夜
プラットホームは驚くほど臭い
それは
サラリーマンが屁をするからで
みんなじょうずに屁をするから
ぼくはまだ
その音を聞いたことがない
電車が来ると黄色い線の内側で
ぼくも屁をした
ドアが開くと乗客はゲロを吐いた
気分が悪くなったのか
もともと気分が悪かったのか
そういう経験って誰にでもある
午後九時。駅のトイレ。
小学生の男の子が
小便といっしょに屁をもらした
隣にいた
中年のサラリーマンは
アンちゃん!屁!したべ!
と怒鳴った。
男の子は駆けて出ていった
おじさんは満足満足といったご様子で
プップカ、プップカ 屁をした
ぼくがはじめて聞いたサラリーマンの屁は
ぼくが眠りにつくまで
何度も、何度も
聞こえていた―