尻尾遺伝
なかがわひろか
尻尾が生えた
触ってみるとなんだか少し
気持ちが良い
女がいた
押し倒して
女の中に尻尾をねじ込んだ
女は身をよじりながら喘いだ
町行く人は
尻尾を見てひそひそと話しをする
子供たちは引っ張ろうとして
悪戯に追いかけてきたりする
いつしか私の尻尾は
町中で有名になって
毎日家の前は
尻尾を見ようとする人で
いっぱいになった
私が出て行くと
みんながおおと歓声を上げ拍手する
尻尾に触ると御利益があるというので
みんなは一斉に私の尻尾に触り出す
私は面倒くさいと思いながらも
気持ちがいいやらで
拒むことができない
女がいた
私が犯した女だった
赤ちゃんを抱いていた
赤ちゃんのおしりには
尻尾が生えていた
みんなは赤ちゃんの方に気を向けた
そのうち誰も
私の家の前に来なくなった
私ははさみで尻尾をちょん切った
少し後悔した
(「尻尾遺伝」)