カッターナイフ
麻生ゆり

さあその刃をちきちきと出して
鋭い切っ先を眺めてみよう
目に見えない何かが
今にも放射されそうではないか
その秘められた機能美に
ぞくりとする
ああ
そのカッターナイフが私の名を呼ぶ
だから
そのとがった切っ先を
ひたと手首にあてて
ひいてみよう
繊維を断ち切られた皮膚から
薄く血がにじむ
その行為が楽しくて
切る また切る
やがて腕が赤く染まるころ
陽が昇る
朝焼けの陽光の中で
ナイフは発光し
全ては赤くなる
私の瞳さえも真っ赤に変わり
狼のようになる
カッターナイフはさしずめ
その牙なのだ


自由詩 カッターナイフ Copyright 麻生ゆり 2007-07-29 22:49:59
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