夏と同化
ゆるこ
薄い煎餅よりもさらに薄い布の上で
夏草を眺めている
ごろんとした四角い窓から
うっとおしい青がてらてらと笑ってる
堪らない蝉の大合唱は
まるで夏の少年だ
"甲虫こっちだぜ-"
虫網を振る風が頬を叩く
酸っぱい香りがぶよぶよした空間いっぱいに広がる
もっと爽やかな
香りはないものか
じりじりと責められる様に起き上がると
四角い窓をめいっぱい広げてだいすきなひとのなまえを叫ぶ
芸能人みたいな白い歯が
残像みたいに宙を踊って
まるで虚しくなったから
浴槽に溜めた雨水にどっぷりつかる
心地良いのだ、これはこれで
背中の方がじわりじわりと孵化を始めた
私は何になれるだろう
そらが飛べればいいな
麦わら帽子に留まろうか
少年に捕まるのも悪くない
そんな独り言を
永遠、呟く
蜻蛉の目玉が
ぎょろりと蝉を捉えた日、
私は固い風鈴に成った