夏と同化
ゆるこ

薄い煎餅よりもさらに薄い布の上で
夏草を眺めている
ごろんとした四角い窓から
うっとおしい青がてらてらと笑ってる
 
堪らない蝉の大合唱は
まるで夏の少年だ
 
 
"甲虫こっちだぜ-"
 
 
虫網を振る風が頬を叩く
 
 
酸っぱい香りがぶよぶよした空間いっぱいに広がる
 
もっと爽やかな
香りはないものか
 
 
じりじりと責められる様に起き上がると
四角い窓をめいっぱい広げてだいすきなひとのなまえを叫ぶ
 
芸能人みたいな白い歯が
残像みたいに宙を踊って
 
まるで虚しくなったから
浴槽に溜めた雨水にどっぷりつかる
 
心地良いのだ、これはこれで
 
 
背中の方がじわりじわりと孵化を始めた
 
私は何になれるだろう
 
そらが飛べればいいな
 
 
麦わら帽子に留まろうか
少年に捕まるのも悪くない
 
 
そんな独り言を
永遠、呟く
 
 
蜻蛉の目玉が
ぎょろりと蝉を捉えた日、


私は固い風鈴に成った


自由詩 夏と同化 Copyright ゆるこ 2007-07-29 21:49:56
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