スノビズムの夜
atsuchan69

そりゃあ、権威を罵るやつが まさか
舞台ウラでは権威にペコペコしてたなんて
あー 嫌だ、嫌だ、たまらねぇ。
 (もう終わりだナ、早く忘れちゃおう

 酒美味し祭鱧佳し夕べかな

 ――ゴーン、ンンンン )))

 薄闇に、山寺の鐘が鳴りひびき、ビキビキ。
【裏切り】というクライン・ブルーの文字が日没の空に消えてゆく
ほんじゃあ、浴衣姿のオネーちゃんを呼び集めては
今から社交ダンス、パンティ脱がしっこ大会でもヤルべーかい。

 ( いつだって、裏切る奴はトモダチ顔して
  そう、きっと群れのなかに雑じっている

 ちょっと野蛮なパゾリーニタッチで、
一瞬、死と生を弄んでは「パチン。と手を叩く
蚊取り線香のけむる長い廊下を行きつ戻りつ
白いドコモの携帯でママに電話――
 「今から僕ん家にアソビに来うへん?

お手伝いさんがソーメンを茹でている、
 「また奥さんに内緒でっか

 やがてダークレッドのセルシオに乗ってやってきた
艶やかな夜のフレグランス薫る、女ども
兵児帯のギャル子たち三人と 割角出し結びのママ 
 (イエロー、ピンク、ブルー、そして有松絞り。

 おー、年増だけど すこぶる美人のママ
亀甲と麻の葉の模様。涼しげな水色の名古屋帯 、、
十キロは痩せて見えるよ ママ・ママ・ママん!

 紹介しよう、こちらは表では土建屋あがりの政治家・・・・
 「はい。女装のときはアケミです、はじめまして
ええと、こちらは 裏でも、表でも安サリーマン
 「おまえ、いつも同じビジネススーツ着てるやんけ、
 「金田満太郎だす。ゼニア、似たやつが三着程ありまんねん
で、こちらは日本が世界に隠すべき ケロイド顔の大詩人
 (時々、国会答弁の台本も書く大手広告代理店勤務、
 「・・・・です。総て俺のシナリオ通りの今日この頃かと。
 さて、こちらは、某大学の教授――
 「只の文学部教授、唯野です

 まずは日本式庭園で打ち上げ花火を連続発射、
石灯籠をかなり酒ぐせの悪い金田満太郎がブッ倒し
池に落ちて背泳ぎを披露。その後、全裸となる
少しも酔っていない、ケロイド顔の・・・・が また、
くっ、だらネー詩の朗読なんかを はじめやがった
唯野センセーは、酔っぱらってアケミを口説いている

 慎ましく、コクヨの折りたたみ椅子に座った
可愛いオネーちゃんたちを飽きさせないように
タコ焼きだの焼き鳥の屋台だのカクテルバーもこしらえ
庭番のシローさんが、かけもちで店を出しているが、
オネーちゃんたちは団扇で顔を仰ぎつ
出前芸人のトークショーに夢中だ

 「去年の夏、酷かったわね
 「あれはあれで。皆が皆、店の常連になったわけだし
 「それって、まるで口封じみたいだわ

 ――あっ、唯野センセーがアケミに殴られているゾ、
うーん、また始まっちゃった・・・・かな?
さすがに出前芸人のトークも中断し、
いっせいに二人にスポットライトが浴びせられた

 女装のアケミは金髪の鬘を脱ぎ捨て、服も脱いだ
鍛えられたムキダシの裸は、じつに男子そのものだった
 「俺はナ じつはタチなんだよ、この糞ジジイ
 「ら、乱暴しないで。そのかわり、なんでもしてあげる
 「よーし、その言葉に 嘘はないだろうな。
 「本当よ。誓ってもイイ! どうか優しく、私を壊して
 「じゃあ、ここにいる皆の前でそれをカラダで証明しろ、
唯野センセーは、鼻血を一筋だけ垂らし
 「はい。私、証明してみせる」と、言う

 ・・・・が、アイも変わらず難解な詩を朗読している
やがて唯野センセーが服を脱ぎはじめた。
そして慌ただしく身支度を済ませた出前の芸人を
こっそりシローさんが軽トラに乗せて門から逃がした

 「こりゃあ、醜悪すぎるぞ。ママ、なんとか止めてや、
 「え、えっ? どうしたらよいのかしら
離れた場所で ・・・・が、「焔に包まれた世界が」と叫ぶ
 「――否、世界を壊すなら むしろ私を壊せ!
それでママは口から出まかせに、
 「止めてちょうだい」と、言い
「唯野さんを壊すなら、むしろ私を壊して」とつづけた。
 「よし、台本どおりだ。ママ、次たのむ
ママは立ち上がり、(もう、まったく)と小声でつぶやいた

 水色の帯をさっと解けば おお、ルノアールの絵画・・・・
ママは勇敢にもエロ政治家の腕をとり、がばっと抱きつく
 「さぁ、あなたちも私に続きなさい!
そう言ってアケミの唇をむりやりに奪う
筋書き通り、戸惑うオネーちゃんの背後に金田満太郎、
そしていつの間にか唯野教授の姿もそこに

 あっ! あ、ついにおっぱじめたママとアケミ。

 ・・・・が、相も変わらず難解な詩をひとり朗読している
すると携帯に着信が。 ――やむなく朗読を中断、
 「もしもし、あー俺だけど
なんだユミ、この不良妻が。
オマエになら幾度だって硫酸ブッカケられても許せるよ
うん、とにかく早く会いたい。
えーっ。それでいったい、いつ帰ってくるのさ?
なんなら俺がマイアミに行こうか、、
ん、ん。ご主人さんなら ああ今、真っ最中・・・・みたい
はぁーん 俺? アー、ハハハ。 馬鹿だなー
ユミしかいないに決まってんじゃん。 )))

 そして、かなり乱暴に
万寿菊の浴衣を強引に剥がす唯野。
金田とイエロー、唯野とピンク・・・・

少し遅れて僕はブルー!








自由詩 スノビズムの夜 Copyright atsuchan69 2007-07-29 20:33:55
notebook Home 戻る  過去 未来