「 チ玉人にはわからない。 」
PULL.







弟が、
はじめて天体望遠鏡を買った夜のことは、
今も忘れない。
失われた母星を見ようと、
みんなでベランダに集まって、
家族で覗き合った。
結局、
あたしたちの母星は等星が低くて、
あの小さい望遠鏡では見れなかった。
だけど、
あの夜見た星々の輝きは、
とっても明るくて眩しくて、
涙が出るぐらい懐かしかった。
あそこにあたしたちはいたのだ。
あそこがあたしたちの故郷なのだ。

今夜も母船が、
空に向かって啼いている。
「るるる・るるるる。」
と、
啼き続けている。

あたしたちは、
この星に長く棲みすぎた。












           了。



自由詩 「 チ玉人にはわからない。 」 Copyright PULL. 2007-07-29 14:59:39
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