空飛び死人
なかがわひろか

私は死んだので
私の体を抜け出した
いつか死んだらきっと飛べるだろうと思っていたから
私は飛んだ
町中を飛び回った

何人かの人と目が合った
けれど何も尋ねられなかった
飛ぶことができるなんて
きっとすごいことだと思っていたので
拍子抜けした

私は私のお葬式を見た
業者の人に任せたらしい
滞りなく式は進み
時間通りに終わった
私の写真もそれほど悪くなかった

私は私が焼かれるのを見た
死体は臭いにおいがすると言うので
鼻をつまんでいたが
あまりにも高温だと
においさえも焼けてしまうのだと知った

私は骨になって
壺の中に入れられた
そのままお墓の中へ入った
あの体を抜け出して本当によかった
ずっとあの中にいるかと思うとうんざりした

一通り見終えると
私はまた町中を飛び回った
また何人かの人と目が合った
けれど誰も何も言わない
私はなんだかつまらなくなった

私と同い年くらいの女の子が
町を歩いていた
じっと見ていたら
目が合ったので
話しかけた

私を見てなんとも思わないの
私は彼女にそう尋ねた
彼女はにこりと笑いながら言った
だってみんな死んでいるのですから

(「空飛び死人」)


自由詩 空飛び死人 Copyright なかがわひろか 2007-07-29 01:01:33
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