ホウセンカ
銀猫
梅雨明けを待てずに
空は青に切り開かれて
ホウセンカの種が飛び散る
新しいサンダルが
小指を破って
滲んだ痛みは懐かしい夏
種の行方を見つめ
きみがいない、
そんなことをふと思う
汗に汗が絡んで
さかなより自由に泳ぎ
かなしさも
気づかぬふりで
恋という名前を盲目で殺した夏
赤い花弁で
ゆびさきから染まっては
愛しい横顔が弾ける、
わたし
てのひらを合わせて
祈っていたのは
同じあしたと信じて
せつなさを愛情と呼んでいた
宿根の赤はそこらじゅうに漂って
さようなら、という文字が
こころで弾けた
ホウセンカ