エピローグ
山中 烏流
君は
僕の知らない目をして
その光景を
眺めている
髪の毛の焼ける
独特な臭いのあとで
君はただ
真っ赤に見える空を
抱く
*
今はもう
塩分と水分に分かれ
元は母と言われていた
大地に佇んでいる
白く靄がかった
濃い空気感の中で
僕は君の腕を掴んでいる
君は僕の喉を握っている
強く、握っている
*
最後に私を
刻んでください
思考を私で
埋め尽くしてください
あなたが宇宙へと還る
その刹那の時を
私に、ください
*
君は目を瞑る
瞑ったあと、開く
何かが焼ける臭いが
鼻を刺すのを
気にも止めないように
僕は君の喉を
そっと握り始める
握ったあと
柔く、柔く、力を
込める
*
小さな雫が
手首に落ちた、刹那
確認するより先に
帰化してしまった
世界は急速に
空を
赤く染める
*
世界が終わる
その最後の瞬間まで
繋がっていてください
その最後の瞬間
名前を
呼んでください
ただ
名前を、名前を。
*
赤く、光る。