しちがつの祭り
あおば

                07/07/26


じとじとして
鬱陶しくて蒸し暑い
長すぎる梅雨が明けると
今度はまっ白な太陽が照りつけて
まだ乾かない大地からは
じくじくと水蒸気が這い出して
その蒸し暑さは耐え難く
もう我慢できないと
大声を立てたくなる
あたまの中はぼんやりして
先生の声が虚ろに木霊して
ニイニイゼミの鳴き声に溶けてゆく

夏休みは何時来るのかな
来るのか来ないのか
来るのか
分からなくなった頃に
終業式があって
大版のワークブックを渡されて
翌日からは
一日中
ごろごろと
寝ころんでいる記憶の隅に
七月のまつりを
思い出す

丁度今頃祭りがあって
派手な模様の山車を引き
大きな太鼓を引っ張って
村中をごろごろ練り歩く
神社の杜に戻る頃には
日射も落ちて
気持ちの良い風も吹いていて
しめ縄を張った境内に
ずらりと並ぶ夜店の明かり
カーバイトの匂いも漂って
お面の小父さん余裕綽々
商売で忙しいふりをする

林檎飴舐めたり電気飴にかぶりついたり
金魚すくいに小遣い叩きすってんてん
借りたお金でヨーヨー釣って切りがない
いつまで居ても叱られないし
もう帰ろうという人が居ないのだから
帰れない
歩いて帰るのだから
帰ろうと思えば何時でも帰れると
狭い境内をぐるぐると切りがない

帰ろうと思うのはいつも
弱った金魚の袋の泳ぎに気付いた頃で
暗い夜道を急ぐ足
そんな夏を何度か過ごした

大人になって
夏祭りでもないのに
なんで7月の祭りをするのかと
土着の友に尋ねたところ
その昔の疫病蔓延したおりの
病平癒、神楽奉納祈願が起こりと
曖昧で重たい返事が返ってきて
納得はできたので
そのままずっと過ごしてきたが
近年は、どこでもなんでも情報はあからさまに公開する決まり
7月の祭りの起源ももう少し分かるかと訪ねたところ
友の話はウェブ頁にも記されていて
ただ、その昔が、大正の初め、20世紀もかなり進んだ頃であり、
神様よりお医者様にお願いする方がより適切な対応と思われて、
祭りの起源は非公開にして置いた方がよいのではと姑息なことを考えているが、
21世紀なんだから、明治も大正も遙かに遠くなっていて、平成生まれの人には、江戸時代と同じで、無知蒙昧でぼんやりとした原始的時代に見えるのかもしれないと、昭和生まれの私は自問自答を繰り返している。







自由詩 しちがつの祭り Copyright あおば 2007-07-26 19:50:20
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