忘れもの 
服部 剛

人込みに紛れ 
駅構内の階段を下りていると 
背後に 
「 だいじょぶですか 」 
という声が聞こえ 
思わず振り返る 

車輪の付いた 
買い物かごの取っ手を 
細腕で握り 
「 よっこらせ 」 
と一段ずつ降ろしている 
麦藁帽子の老婆に 
若い女が声をかけていた 

人込みに押し流され 
再び歩き出した後 
もう一度、振り返る 

駅へと続く階段の上は隠れて 
老婆と若い女の姿は 
すでに見えなくなっていた 





未詩・独白 忘れもの  Copyright 服部 剛 2007-07-26 18:47:58
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