物語を語る前に
狩心
危うく物語を語るところだった
悪魔の囁きで
デコレーションされたチーズケーキに
騙されるところだった
数ヶ月ぶりにきた誕生日に
公衆トイレで立っていた時に話し掛けられた
肩に手を掛けられて
トイレに駆け込んだ
尿意に突然襲われたので
AからBが吐き出されそうになっていた
話し相手について考える
煙草の煙を吸い過ぎた過剰な掛け算が
公園を一人歩く
犬の散歩をしながら
俺のドッグが!
お前はそもそも何をしゃべっているのか分からない
一人の他人と出会った
公園に行くまでの過程
選挙演説がうるさいので私は場所を変えることにした
目覚めの悪い朝だった
他人に起こされて
一人眠る俺を誰かが見守っていた
夢の中で
夢を見る前に私は自分が眠っている事を確認した
皆が寝静まった深夜のこと
家に入れずに何度もドアを叩いた
私はドアの鍵を無くした
駅から家までの長い道程を歩いて帰ったのだ
霧の深い夜だった
私は自転車の鍵を忘れた事に気付いた
会社のデスクの引き出しに
雨が降っていた
仕事中
明日迎えるたった一人の誕生日を予言していた
お前には自由意志が残されているのか
パソコンの画面で動くキャラクタが可哀相だと思った
私に作られたお前よ
ゲーム会社の門は重く深く
銀色に輝いていた
不可能な私は家を出た
昨日は何をしていたのか思い出せない
空白の日々が続いていた
お前が私と別れたあの日から
愛について考えている