虫の味
服部 剛
なぜあなたは
病の親の世話をして
毎朝歯を喰いしばり
家の門を出て来る部下が
体調崩し仕事を休む
辛いこころが見えぬのだ
わたしは今日も ふんふん と
あなたの腐った愚痴を聞く
(ヒトデガタリナイタイヘンダ)
慌てふためく器の無さに
震えるこの手は隠したまま
上司だという上辺の理由で
あなたに仕えるふりをする
帰りの夜道でわたしはひとり
今頃病の親を世話する後輩を
うつむきながら思い出す
ちゃんと守ってやれない
無力な影を地に伸ばす
わたしの開いた口に
何処からともなく翔んで来て
入りこんだ苦虫を
黄ばんだ奥歯で
噛みつぶす