擬人化
あおば

攻撃用メモリーをセットして開始のゴングを待つ間に汗が首筋から噴き出てくるのを意識する。手でセンサーの位置を少しずらして、改めて合図を待つ間に戦意が遠のくのを覚え、敵陣の相手の顔をもう一度睨み付けて、憎悪をむき出しにした相手から戦いのエネルギーを少しだけもらう。戦え戦え、負けるな自分、負ける振りして斬りつけろ!
敵の憎悪を懐に思いきりぶち込んで勝利をもぎ取るのだ、と必勝の作戦を立てた。ゴングで立ち上がった途端に台詞が飛んで無音の間に聴衆の失笑が天井から反射してきて二重になって聞こえる。これでは勝てないとすぐに作戦を変更。朗読時間を忘れたような悠々とした素振りで相手の戦意を逸らす、が、しかし、攻撃用メモリーの容量が不足して、最後の方が話せなくなってしまうが、誰も聞いていなかったから勝敗には・・・・・・・・・・・。目玉の中に必殺平気を隠してからステルス性を高めて天井裏の見えない敵を探すのだ。声にならない声が囁くので、ガ音とギ音を連続モードに変更。擬人化された聞き取れない再生音が天井から反射して2重螺旋となって敵陣を覆う。逃げられたら逃げてみろと声なき声がせせら笑うので、首を絞めるように唇を絞めてとどめを刺した。勝敗は不明。



作2007/07/24


自由詩 擬人化 Copyright あおば 2007-07-24 22:28:07
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