名もない川
乱太郎

源流に程遠くなく
清らかな姿を
留めながら
静かに流れゆく
孤独な細い川


貞節な乙女を
思い起こさせる
喧騒に揉まれる前の
ひとつの
純真

フルートの音色が
時折舞い落ちる葉とともに
川の透明な肌をこすり
安らかな微笑みが
波紋となって広がっていく
ひとつの
純粋


果てしない
記憶を汲み上げて
誰かに教えようとするわけでもなく


ひっそり
流れていく


触れることを
拒否しているかのように


黙々と
流れていく


ここに
いるのは
静止


クマゲラの雌が
静寂を摘まんで
雛の待つ森の奥へ


そして


無色な透明な
名のない私



自由詩 名もない川 Copyright 乱太郎 2007-07-24 21:36:45
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