かくれんぼ
なかがわひろか
鬼がやってきて
かくれんぼをしようと言った
僕たちはちょうど
何をしようかと考えていたところなので
いいよ、いいよと
鬼に賛同した
鬼が百まで数えている間に
僕は境内の下のくぼみのところに体を埋めて
ひそ、と隠れていた
数を数え終わった鬼は
辺りを見回して
子どもたちを探し始めた
僕はくぼみから時折顔を上げながら
鬼の探す姿を見ていた
鬼は次々に子どもたちを見つけては
頭からがぶりと喰っていった
鬼はよほど腹を空かしていたらしい
たくさんいた子どもたちは
全員見つけられて
あっさりと平らげられてしまった
腹いっぱいになった鬼は
満足してしばらく横になったあと
神社を去っていった
僕はずっと鬼が僕を見つけてくれるのを
ドキドキしながら待っていたけれど
鬼にはもうその気はなかったようだ
僕は鬼に見つけられないまま
あちこちに鬼の食べかすが残る神社を見渡して
こんなに汚してきっと怒られるだろうなと
少し悲しくなった
(「かくれんぼ」)