二重奏
狩心

白い空間に影が飛び交い
そこは無限の獄中と化す
左下の隅に ローブを纏う人 顔は見えない 暗く 深く 後ろを振り返っている
その隣に僧侶 船を漕ぎ出している 遥か彼方を見据えて
その頭上に 顔面を潰された髪の毛の無い宇宙人が無表情で
そこで浮かび上がる ローブを纏う人の肩の上にもう一人
ローブを纏う人 とても薄く 今にも消えそうだが しかし 明確に強く
見下ろす 海の距離を 波の音を そしてその上を
回転しながら滑空する風の刃
何かの魔法のように 鳥達が騒ぎ出す
不死鳥 フェニックス 蛇の姿をした鳥 ケツァルコアトル
火を司る精霊 トカゲのような姿を持つ サラマンダー
動物の骸骨と人間の顔が交互に浮かび上がり
その中を飛んでいく飛空挺 それに乗り遅れた人々 天を仰ぐ
両手を広げ 遅れた者を塞き止める門番
下半身は無く 上半身だけの幽体
海面から反り返るように続く 蜃気楼の階段 細く長く
遥か天空へ向かう 黒い波は地上だけでなく 側面そして空をも包む込み
ここは一つのランプ その光 膨張と収縮を繰り返し 時を刻む
ゆっくりと 布を縫うように
空に切れ目が走り そこから飛び出すサイの顔
自らの体を忘れて 一体ここは何処だと 口を大きく開けている
空に大きな穴が開き 竜巻の如く全てが巻き込まれて行く
ローブを纏う人はいつの間にか前を向いている
渦の中に巨大な顔が現れては消え現れては消え
その音を背後で聴きながら

側面を垂直に下りてくるキジのような鳥の群れが
一体なんだったのか 今もまだ 分からないで居る


自由詩 二重奏 Copyright 狩心 2007-07-23 23:56:16
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