冒険者
狩心
傷は黒く切り裂く飛び散る羽
船と気球は別々の方向へ向かう
感情の線は鳥の形をしている
白い空間は必ず黒く擦り切れる
波の色は緑
寄り添う二本の木が横に項垂れて
水面の波紋を真上から見下ろしているのか
寄り添う二本の木が直立不動で
水面から立ち上る水蒸気を真横から眺めているのか
今はもう分からない
あの頃の思い
祭壇の上に乗せられて
神のような支配者に指差され
中身が透明で真空の十字架に
今にも突き刺されそうだ
その処刑場にて野次馬は姿を隠すように透明で
ここからは表情も見えない
しかし皆、肩を落として項垂れているのだけは分かる
現代の我々の記憶
農耕民族だった稲作の記憶
橙色の太陽の光に手形をつけた
水色の水面に手形をつけた
その指紋が今も残っている
平面化された緑と土
区画化されて図形を生み出した
中心を対角線上に突き抜ける舗装された道路
所々に穴が開いている
穴の向こうに白い壁が見える
全ての色が炎のように踊りだし
灰になる度に中心へ向かう
中心には灰が溜まり、黒い炎が存在する
枯れた木が人の手のように伸びてくる
黒いその手に白い血管が浮かび上がる
ドクドクと鼓動を打つように
生命を呼び覚ます
その手が包み込む丸い球体が我々の祖先
やはりそれも灰色をしている
髪の毛のない人類は大きな目と大きな口を持ち
繊細な指先はなく、縄のような手で水色の魂を掴む
水色の魂は精霊の囁き
その中に数々の小宇宙とそれを飲み込んだブラックホールの
壮絶な戦いの歴史が記憶されている
その記憶
髪の毛のない人類の
喉仏に開いている橙色の痛々しい傷口の穴から全て受け取る
魔物のような砂漠の竜巻が
貝殻の家に住む者達を飲み込んでいく
ジャリジャリと音を立てて
飛び跳ねる空中のウサギ
竜巻の中で橙色の血が白い意思と混ざり合う
砂漠の王が錆びた鉄格子を見つめる
砂漠の砂、錆びた鉄、滴る鮮血
それらが入り混じり、王国は終わりを告げた
そして世界に初めて、桃色の液体が流れた
それからというもの、あっという間に色とりどりの色がぶちまけられ
空間は歪み出した
出会う筈のなかった空間が出会ってしまう
混沌が再起動し始める
大きく見開いた目は興奮と怒りを象徴し
大きな口は歯を食いしばり、何かを叫ぼうとしている
しかし、その世界は無音
斜めに降り注ぐ流れ星のような虹色の雨が
画面を覆い尽くす
宇宙空間を彷徨う幾何学的な形をした生命体に太陽がゆっくりと近づく
暗黒空間は真っ赤に染まり
新しい生命の歓喜に震えている
太陽は外側から 赤色 → 橙色 → 黄色 → 黄緑色 へとグラデーションしている
地球に青色と水色の雫が降り注ぐ
公園の錆びたブランコやシーソーに降り注ぐ
千の夜を越えて
深く深く深く水面を上昇させる
水面の中には深い緑
サボテンが生まれ変わろうとしている
白色と水色が交互に折り重なって続く渦巻状のトンネル
平面が立体のように見える錯覚を利用したトンネル
人々は迷わずそのトンネルを奥へと進む
何もない神聖な匂いが懐かしい気持ちにさせるのだ
行き止まりの部屋には膨大な埃が堆積している
そこで初めて、自らが歩んできた道のりの時間を知る
行き止まりの部屋から
鋭利なナイフで空間を構成していく
部屋と部屋とをつなぎ
脳と脳を刺激する
ここも新たな宇宙
象形文字で描かれた
進化の過程が 黄緑色 → 赤色 → 青色 へと流れている
そこに白いバツ印と無数の白い手形を焼き付けて
これを遺言として残す