みどり よびこ Ⅳ
木立 悟




夜はせばまり
夜はひろがる
粒と浮かぶかたちと唱と
妨げを泳ぐ轟きと尾と


波の終わりとはじまりに
砂の言葉と花火があがる
水からひろいあつめた羽と
貝のかたさの音のつらなり


色と影の少ない川に
小さく浅い跡を残して
指の羽は北へ向かう
冬の背中をなぞりつづける


蒼を讃える祭をすぎて
造られた風の震えを聴く
羽と羽の重なりの夜
新たな声が生まれ降る夜


手のひらの上の手のひらに
火があり 回る菓子があり
うつろな言葉を欲するものらは
揺れる影を避けつづけている


手は手をつつみ
仮面は外され
花の下にしまわれて
光のはざまから季節を見つめる


うずくもの 火照るものをなだめては
羽はすぎ 洞はつらなってゆく
地の火 空の火が内をはばたき
さらに高みの洞を照らす


波が波をめぐりくる
音は音を聴いている
跡が声が消えては生まれ
わずかに残る火をつもらせてゆく


小さく命を喰む口もとが
右胸の奥で寝返りをうつ
呼ばわるもののまわりにひらく
ひとつの色を夢みながら


















自由詩 みどり よびこ Ⅳ Copyright 木立 悟 2007-07-23 15:38:38
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