旋律街
hiro
ビルの間から差し込む月輪の筋が
静寂に包まれた街の噴水の塔を照らし
風が精緻に形どった街灯をなでた
噴水の前に赤毛の女が立ちつくし
トランペットを月明かりにかざした
そして風が吹き止むのと同時に拭き出した
渇いた街の中に音は共鳴し
噴水の無表情な水面を靡かせた
突然噴出した噴水のしぶきが
宝石のように月明かりに照らされ
波紋を描く水面の上に零れ落ちた
噴水の清澄な旋律と
トランペットの闇を裂くような旋律が
融合し街を騒ぎ立てた
しかし赤信号の点滅が止むと
赤い髪の女の姿はなくなり
街はまた静まり返った