あるフィルム
おるふぇ



 (愛、

  愛っていうんだね)




 もしもわたしが
 翼のない鳥に
 生まれていたら

 いろんな悲しみを
 もっと上手に
 愛せたかしら



 不思議だわ

 不思議だね

 あなたも

 わたしも

 もうなにもかも

 不思議だとしか

 思えないわ



 多くの優しさの中で
 涙をおぼえたの
 醜い裸体を晒して
 汚れのない魂を
 痛みのうちで
 守り抜こうとして



 それでも微笑んでいたの



 (永遠だね

  永遠だよ

  今はずっと

  消えていく



  優しい音の中で)



 この世界が
 狭苦しい鳥籠だとしても
 想像する力は
 あの空や
 宇宙の果てまで
 羽ばたいているわ



 誰にも止められず




 意味は虚しさに直結し
 わたしたちは
 言葉を持った
 はじめに話した言葉は
 どんなうたよりもうたで
 ずっと身体の奥で
 おぼえている




 (そうだ

  どんな魔法も

  あなたの温もりには

  かないやしない)




 わたしたちは迷子で
 生まれた時から迷子で
 そのすべてが魔法だった 全部は明らかに
 最初から素晴らしい



 (たとえ最後が

  なにになろうと)




 りんりんとした

 日々を重ねていくうちに

 まるまるとした

 あの月に似てくる

 どうりでわたしたちは

 愛し合っているわけだ



 綺麗ね

  透明なしずくも

 綺麗ね

  高架の上の虹も

 ねえあなたも

 そう思うでしょ


 綺麗ね

  ショートムービーの

  途切れたフィルムの

  ワンシーンみたいに





 (っていうんだね…





  …そうだよ



  うん)






自由詩 あるフィルム Copyright おるふぇ 2007-07-20 08:03:20
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