のっと、しんぷる
山中 烏流
目を瞑り
微笑んでいたのは
遠い日の残像に似た
脆い、光
壊れないように
そっと、手を触れてみる
優しく息づくそれに
耳をすませた私は
ふと、安らぎを覚えて
多分それは
私の足りないものを
補うために
生まれたのだと思う
寄り添い
知らぬ間に支えて
私の足りないものを
補うために
生まれたのだと思う
いつか
これを、物語にしたい
そうして
ずっと生きていきたい
形という、概念すら越えて
本に栞を挟むように
眠りに落ちて
そのまま
一つになれるような
気が、する
そのまま
一人になれるような
いつか
壊れてしまった時は
私も
壊れにいくよ
大丈夫
独りにはしないよ、と
いつの間にか私も
それを
支えていたことを知り
(のっと、しんぷる
目が覚めてしまっても
大丈夫だと思う
ほら、私まだ
こんなに
幸せなのだから。