血液から生え出す植物、青。
あおば

                   07/07/19




植物と動物との違いを言いなさい
突然、脳内細胞が切れたような声がして
振り向くと生物の先生が切れた顔をする
中間テスト範囲内の頁には書いてなかったような気がするので
済みません、勉強不足で分かりません、と、逃げようとしたら
逃がしませんという顔をして睨まれた
先週の授業をずる休みしたのがばれたのか
生物より物理の方が好きなのがばれたのか
理由は不明で、不機嫌な怖い切れた顔だけが目の前にある
走って逃げれば追いつけないのは分かっているが
走って逃げれば次の授業に出席しにくくなるのは当然で
出席時間数が不足して単位取得が困難となるのは必然で
担任の先生に相談しても、出席不足は事実して存在するから
それを無にするのは難しく、適当な教育的理由付けが必要だ。

目の前にある怖い顔は動物に例えると肉食獣の顔で
目には少しの気の緩みもなくて無慈悲な光が放射状に放たれる
これでは気の弱い草食獣は逃げるどころか足がすくんで走れない
どうしてこのような怖い顔があるのだろうかと肉食動物図鑑を借りだして見たが、その理由はどこにも記してない。
どこにでも居る動物の目の光についてもよく分からないのに、
その根源となる植物と動物の違いをどうしたら見分けられるのだろうか。

<空の果てには電離層があって電波を反射したり通したりの波長選択性がある>

 空の中には空気や細かい埃が拡散していて可視光を波長選択的に散乱すると、物理で習ったので、植物と動物では細胞が光を選択する波長域が異なるのですと出任せに言ってみた。怖い顔が一瞬ゆるんで遠い目をしたので、それ以上は分かりませんと言って、後ろを見ないで歩き出す。先生から逃げたのでなく、目的地に向かって歩き出したのだと自分で自分に言い聞かせ、廊下を曲がって靴を履き替え、電車に乗って帰宅した。
 それ以来、生物は苦手となって、植物も動物も依然として進化の過程にあると思いながらもそれ以上考えることなく過ごしているが、期末試験も近づいたので、血液中に視覚細胞が生じて植物となり、その細胞内のミトコンドリアが空気中の酸素を取り込み散乱するので青く見えるのです、と、この次、切れた顔の先生に会ったら答えようと考えている。



自由詩 血液から生え出す植物、青。 Copyright あおば 2007-07-19 19:24:31
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