飛行機雲
雨宮優希



電車に揺られながら窓の向う
つまらなそうな顔して見てる君よ
僕の声は聞こえないだろうけど
一つ伝えたいことがあるんだ

「そんなにも怯えなくていいんだよ」

毎日何かに追われてるみたいに
生き急いで 虚勢をはって
周りに合わせることだけ考えて
自分なら無理矢理押し殺して

今日はどの仮面をつけてたんだい?
鏡に映った顔は自分のものかい?
最近ちゃんと笑ってるかい?


覚えてもいない昨日のドラマの話して
興味もない誰かのゴシップネタ聞かされて
ベルが鳴ったらくじで決めた居場所に座って
窓の向うには何が見えてるんだろう

何があるわけじゃないけれど
それでも毎日がただ精一杯だった
都合の良い自分をずっと演じて
顔を洗い流すたびに 泣きそうで
窓の外見えるのは いつだってただの景色で

誰にも理解されないんじゃなくて
誰も理解しようとしてないってこと
本当はもう気付いてるんだけれどもね


いつもの目的地についた電車のなか
眠った振りして息を殺してる君よ
僕のことはまだ知らないだろうけど
一つ聞いて欲しいことがあるんだ

「何も君と変わってないよ。大丈夫」

僕は今つまらない毎日を送ってる
君が望んでいたそれを手に入れたんだ
それなりによくある恋もして
誰より分かりあえる人にも出会って
小さいけれど自分の居場所も見つけて

たぶんこれが幸せって言うんじゃないかな?
自信はないけれども そう名前付けたよ
君は気に入ってくれるかなぁ


窓の外のただの景色は
今日もあの頃と変わらずに青いよ
一直線に伸びたそれが
何処までも 何処までも途切れずに
君もまたそれを見てるのかな?


「今日もこっちは晴れだよ」






自由詩 飛行機雲 Copyright 雨宮優希 2007-07-18 03:02:10
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