サイレン
悠詩

サイレンに近づいてはならぬ

そは破滅をもたらすもの
そは災禍をもたらすもの

蒼き焔の説法
歌声がいかに甘美であろうと
美しき星が時を奪うように
その先には屈折した現実が
口をあけて待っておろう

胸の隙間に入り込んだ黒の衝動は
強靭な意志で絶たねばならぬ
かりに叫びを上げようものなら


 イ
  レ
   ン

そは破壊をもたらすもの
そは災禍をもたらすもの

忘るるなかれ
サイレンに近づいてはならぬ
沈黙をまとい
身を沈める笛は
突然に哭く
そは輝かしき凶星
そは艶かしき呪詛



もしサイレンに応えるだけの
智慧と勇気があらば
汚穢に身を委ねるがごとく
突き立てられた剣の血を浴びよ

もしサイレンを凝視するだけの
覚悟と憐憫があらば
天に祈りを捧げるがごとく
とこしえの語り部となれ


禍々しきサイレンより
目を背けんとして
かりに瞼の裏に
紅き焔の説法が浮かばば


 イ
  レ
   ン

そは慈悲をもたらすもの
そは純愛をもたらすもの


忘るるなかれ
サイレンを消してはならぬ


自由詩 サイレン Copyright 悠詩 2007-07-17 22:21:28
notebook Home