サイレン
悠詩
サイレンに近づいてはならぬ
そは破滅をもたらすもの
そは災禍をもたらすもの
蒼き焔の説法
歌声がいかに甘美であろうと
美しき星が時を奪うように
その先には屈折した現実が
口をあけて待っておろう
胸の隙間に入り込んだ黒の衝動は
強靭な意志で絶たねばならぬ
かりに叫びを上げようものなら
サ
イ
レ
ン
そは破壊をもたらすもの
そは災禍をもたらすもの
忘るるなかれ
サイレンに近づいてはならぬ
沈黙をまとい
身を沈める笛は
突然に哭く
そは輝かしき凶星
そは艶かしき呪詛
もしサイレンに応えるだけの
智慧と勇気があらば
汚穢に身を委ねるがごとく
突き立てられた剣の血を浴びよ
もしサイレンを凝視するだけの
覚悟と憐憫があらば
天に祈りを捧げるがごとく
とこしえの語り部となれ
禍々しきサイレンより
目を背けんとして
かりに瞼の裏に
紅き焔の説法が浮かばば
サ
イ
レ
ン
そは慈悲をもたらすもの
そは純愛をもたらすもの
忘るるなかれ
サイレンを消してはならぬ