掌の上に
服部 剛
テレビをつけると
瓦礫の山から掘り出され
額に血を流した中年の女が
担架から扉を開けた救急車へ
運び込まれていた
その夜
テレビの消えた部屋で
歯を磨き終えたぼくは
裸足で歩く踵の下に
なにかを踏んだ
振り向いて
屈むと
団子虫が平たくなっていた
ティッシュの上に
小さい遺骸をのせて
ふいに思う
あの
大地震の後
救出された中年の女と
潰れた団子虫と
ほんとうに
命の重さは
違うのか?
自由詩
掌の上に
Copyright
服部 剛
2007-07-17 00:59:38
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