ぐるぐるのとき
うたかたら

そのときはいつもからだごと液になる
ホルモンとかいう見えないつぶつぶがいっぱい溶けてて
また抵抗できずにやられちゃったんだ

力ない屍はやけにしなやかで、きもちわるいのにきもちいい
ゆっくり性器に手を伸ばそうとして
そんな気分にさえなれないということにいまさら気付く

音と空気に流され押されて
僕はもうろうとゆううつな放浪を始めた
センチメンタルがカーテンを閉めてしまったので
当分帰ってこれそうでないようだ

こころってものが、勝手に生み出されてあわあわになってしゅんときえてく
たまにそいつが胸にぶつかって、びっくりした筋肉がちょっとだけきゅっと縮む
そ知らぬ顔であわは飛んでいくから、血の通った感じだけが胸に残った

上の方の、もっともっと遠いところで、きらきらした水面が笑ってる
すこしだけ、うふふとおもったから口角に笑顔を貼ってみた
でもずっと見てたらなんだか腹が立ってきたみたいになった
腹の中から立ち上がってきたもこもこが、喉の奥からぐいぐい押してきて
頭を出してそのまま僕の顔を食べてしまいそうになったから
だめだよと、今回はきびしめにたしなめた
もこもこはしょんぼりしておなかの底へと帰っていった

僕はとうとうひとりぼっちになった
強がっていたときはよかったなあとふと思うと
目じりがちょこっと濡れてしまった

左足の小指からは血が出てルビィのように丸くなっていた
「こんにちは生まれたての地球」
愛をこめてなでようと指で触れたら
びちゃっとつぶれて広がってしまった
ぴかぴかがなくなってびちゃびちゃにとけていく
少し鉄の匂いがしてウッとなった気がした

だからそのウっていう気持ちをからだいっぱいで表現してみた
四肢を地に着けて拡がってみた
どんどんと僕と外との境界があいまいになって溶けて
気付いたら地面になっていた
ちょうどおへそのあたりにたんぽぽが咲いてて
ちよっとだけ、幸せな気分になった


自由詩 ぐるぐるのとき Copyright うたかたら 2007-07-16 23:46:25
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