くも
ゆるこ

 
酷く懐かしいおとの方向に
ゆっくりと重たい足を運ぶと
静かに瞼をとじた
まだらな少女が蜘蛛を数えていました
 
ここは危ないよ、
逃げないとそのいやらしい銀糸に絡めとられて
ぱくっと食べられてしまうよ
 

 
言おうと思ったのですが
少女の眸があまりにも欲情していたので
私はそのまま空を眺めながら
また重い足をどこかに運ぶのです
 
 
酷く憂鬱な気分が
頭のうしろ辺りから
ゆらゆらと浮かび上がると
蜘蛛達が
一斉に活動を始め
綺麗に綺麗に女の子を人形にして
端からばりばり食べていました
 
私は口元に微笑みを残し、
渇いた空に笑うのです
それはあまりにも空っぽな気持ちで
木枯らしがぴゅうぴゅうと血液を浚いました
 
砂上の城は崩れ
私はまた、重い足をどこかに運ぶのです


自由詩 くも Copyright ゆるこ 2007-07-16 06:52:41
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