七里ヶ浜にて
銀猫

低く垂れ込めた
嵐の雲のなかへ
灰緑色の階段が続き
海は大きなちからに
踏みしめられるように
しろく崩れながら
膨らんでは混じり合い海岸線を削ってゆく

風はいっそう強くなり
雨と潮は無造作に
からだを刺す

乱暴な空模様に
七里ヶ浜は哭き
砂で作られたくろい腕も
泡と変わり
女の髪のように
頼りなく波に揉まれて沈んでゆく


(なぜ、)


その問いは
強い風にちぎれて
ことばを拾おうとしたわたしの指を切り
呼吸はどこか
うすく血の味がした


なぜ海が見たいのだろう
夏を待てずに




自由詩 七里ヶ浜にて Copyright 銀猫 2007-07-15 16:26:32
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