テトリス
悠詩
無邪気な夏を疑いもしなかった僕らは
教室にひしめいて
このなかから将来
プログラマになるやつが
出てくることも知らず
なにかを求めて
なにかを積み上げ
なにかをこねまわし
なにかを寄せ集めては
なにかを壊し
なにかを消化し
なにかを噛み砕き
なにかを消していた
教室いっぱいに虫食い胸が溜まろうと
窓をあけて
そらを切り取って
雲を飲みこんでいた
なあちょっとお前の手で
この空白を撫でてくれないか
なんて恥ずかしくて言えなくて
撫でてやろうかなんて
できるのに
言えなくて
I字
素直でなんでもできる
でもこういうやつに限って
トイレでは根性をひん曲げているんだろう
角型
見た目は端正なくせに
案外意気地がない
ときどき浮いている
T字
器用なやつだ
重宝されるが
器用貧乏だ
鏡の中のもうひとりの自分を
知っているやつは
少々やっかい
N字
似たモンどうしで
うずたかくなってんなよ
かしましいっての
L字
穴があったら入れたがる
男同士
女同士
やたら抱き合いたがる
いやらしい
僕たち
みんなI字でなくてよかったかも
半永久機関みたいなつまらなさは
ごめんだ
だから僕は
プログラマに叫ぶ
絶対おまえを
うちとってやるからなって
手をつなぐより
どうやってもつながってくる手を
振り切るほうが
何億倍も難しいんだ
最近では
身体に爆弾を抱えたやつも
現れたらしい
僕はなにも知らずににそれを見ていて
なにも知らないつもりで見ていて
一緒に爆発して
自分にはじめて爆弾が仕掛けられているのを知った
それを先に言えよ
プログラマ