ウィリー、ウィリー、きみの名は、
望月 ゆき

放出された 夏の、
取り扱いをあやまった空から
束ねられた雨が落下する
世界はまだ、はっきりとした輪郭を持っていて
ぼくも きみも それを知らない 


ウィリー、ウィリー、
なぎ倒された木々の根からわきあがる熱に
点滅する、信号のみどり色


閉じられた、ぼくの咽喉に
穴を開けてよ その次の瞬間
氾濫をはじめる言葉たちの、濁流で
きみは 泳いでくれるかい


ウィリー、ウィリー、
くぐもった聴こえ その叫びの発せられる方向
入水した空に きみは
なにを逃がしたの


通り過ぎたあとの残像
それを真似ただけの、声と
整列している 砕けた夏の破片


真昼の空
散らばるものはなにもない
ウィリー、ウィリー、もう、
きみの名前さえ わすれてしまった





ポエニーク 即興ゴルコンダ投稿
オーストラリア地方で、台風のことをウィリー・ウィリーと呼ぶのだそう 



自由詩 ウィリー、ウィリー、きみの名は、 Copyright 望月 ゆき 2007-07-14 11:14:34
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