愛しい型
なかがわひろか

愛しい人が欲しいと思ったので
近所の画材屋さんから
たっぷりと粘土を買ってきました

しっかりとこねた粘土で
右足のつま先からペタペタと
粘土で型を作っていきました

下半身を作り
お腹を作り
胸を作り
腕をくっつけて
首をくっつけて
顔を半分ほど作ったところで
突然型は動き出しました

止まれと何度も言いましたが
まだ頭が半分しかできていないので
きちんと言葉を理解できないようです
型はウロウロと大変です

仕方がないので
私は思いっきり体を型にぶつけました
型はぶちりとちょうど腰のところで
二つにちぎれました

二本の脚だけがウロウロとしています

脚は最後にくっつければいいことにして
私は残りの部分を作り始めました

ペタペタペタペタ
ウロウロウロウロ
ペタペタペタペタ
ウロウロウロウロ

脚はうるさく部屋中を歩き回ります
顔はもうほとんど出来上がりました
私好みの顔に仕上げて
私はとても満足です

型の上半身を持ち上げて
下半身にやっとの思いで追いついて
型を一つにくっつけました

完成した愛しい人の型は
私の方を向いて
何も言わず
そのままドアから出て行きました

(「愛しい型」)


自由詩 愛しい型 Copyright なかがわひろか 2007-07-14 00:46:41
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