戦場へ
楢山孝介

国のためには死ねないけれど
恋人のためなら死ねると思う

そんなことを言う若者が増えてきたので
国は美しい女の振りをして
全国の若い独り身の男たちに
情熱的なラブレターを送りつけた
まんまと騙された若者たちは
愛の告白に呼び出されて
戦場へ送られていった

恋人や妻がいたり
ラブレターなんて開かなかったり
開いても信じようとしなかったり
信じても会う勇気のなかった若者のもとには
後日改めて
色だけは情熱的な召集令状が届き
結局彼らも
戦場へ送られていった


自由詩 戦場へ Copyright 楢山孝介 2007-07-13 21:14:02
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