空蝉の夏が、また
Rin.




夏が、また―――
怖いですか
あのひとの抜け殻だから

まひるの世界はあまりにも眩しく
夜の世界は、私には暗すぎる
いつからか
瞳が捉える色彩は
こんな風にゆるぎはじめて
いつのまにか
夏が、また

抜け殻は
こんなにも軽いものでしょうか
それとも飛び立ったいのちが
飛び立った、それが

私だけが知っている
色彩の、おぼろな世界

そこから逃げだした
あのひとのゆくえは、しらない

本当のことなど
伝えなければよかった
同じことならば
偽りを抱く痛みのほうが
あわく、やさしかった

生きているかぎり
夏はめぐるのでしょう
そのたびにひとりで
叫べない声で書く
あのひとのゆくえなど、しらない
同じことならば
偽りを抱いていたかった、と

空蝉の夏が、また――









自由詩 空蝉の夏が、また Copyright Rin. 2007-07-13 18:00:29
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