空蝉の夏が、また
Rin.
夏が、また―――
怖いですか
あのひとの抜け殻だから
まひるの世界はあまりにも眩しく
夜の世界は、私には暗すぎる
いつからか
瞳が捉える色彩は
こんな風にゆるぎはじめて
いつのまにか
夏が、また
抜け殻は
こんなにも軽いものでしょうか
それとも飛び立ったいのちが
飛び立った、それが
私だけが知っている
色彩の、おぼろな世界
夏
そこから逃げだした
あのひとのゆくえは、しらない
本当のことなど
伝えなければよかった
同じことならば
偽りを抱く痛みのほうが
あわく、やさしかった
生きているかぎり
夏はめぐるのでしょう
そのたびにひとりで
叫べない声で書く
あのひとのゆくえなど、しらない
同じことならば
偽りを抱いていたかった、と
空蝉の夏が、また――