夕焼けの終着駅
黒子 恭

 
 
空がオレンジに染まってしまって
お前が生きた一日が終わる
そろそろ
水平線を被りながら
俺の視界の届かぬ場所にて
お前は眠りにでもつくのだろう
 
俺達は未だ
蛍になったかのやうに
街を照らしたまま
眠るタイミングを
計りきれずにいる
 
 
あの日、
夕焼けの終着駅に
一体、何を忘れてきてしまったのだろうか
 
 
お前は静かに、
ただ静かに海の切れ端を灼きながら
落つるやうに
眠りにつきよる
 
そうして
まんまと先を越された俺達は未だ
街に照らされたまま
眠るタイミングを
計りきれずにいる
 
 
あの日、
夕焼けの終着駅には
生き急ぐ事しか出来なかった俺達が
まだ佇んでいたのではないだろうか
 
夢ばかり見た、
夢ばかり見た日々の終わる場所で
長く伸びる影を
じぃっと
見つめていたのではないか
 
 
お前はもう頭だけ
申し訳なさそうに残して
「おやすみ」
と言うだけだった
 
そんなお前に
何も言いかへせない俺達は未だ
生き急いだまま
眠るタイミングを
計りきれずにいる
 
 
夕焼けの終着駅では
もう夜が待ってる。
 
 


自由詩 夕焼けの終着駅 Copyright 黒子 恭 2007-07-13 12:51:52
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